ほんの数時間前まで眺めていた風景が180度近く変わった。
隣でおやじが「嗚呼、また現実に戻ってきた」と街の綺麗な夜景を見下ろして嘆いた。
この数日間、時が止まったように一秒一秒を一秒一秒過ごして
お腹いっぱいというより、時の流れに逆らうことなく、素直に時を己に費やした。
在りし日の命に、永劫生き続けてほしいと願い、確かに共に共有した時間のフィルムを巻き戻して
脳裏のスクリーンに映し出しながら、酒を酌み交わす。
ほんの数日しか滞在しなかったのに、数多くの記憶と記録が蘇り、生まれた。
とても静かで優しく流れて行った時間は、いざまた始まる日々を目の前に
とても激しく激流の如くプレイバックされている。
そんな親父の嘆きに、時間差で陥っている自分の心の動揺を尻目に
窓越しの日常は淡々と明日を見据えている。