10.30.2010

川端情緒非情

急激な季節の変わり目に勃発した戦。

それは僕の住処をも戦の渦に巻き込んだものだった。

僕の住処に突如飛来したB-29ならぬD-29(ダニ-29)は

沢山の爆弾を僕の鼻孔に投下し、すぐさま風のように去って行った。

甚大な被害を受けた僕の鼻世界は焼土と化し、復興を余儀なくされた。

復興支援を得るため、僕は木枯らし舞う川端商店街のドラッグストアへ向い

一時的な鼻世界の混乱の沈静化を図るべく、特効薬を探り始めた。

とはいえ、ドラッグストアの多種多様な薬の陳列技法に戸惑わされるばかりである!

そこにドラッグストアの神・薬剤師が救いの手を差し伸べる。

「どのような症状でいらっしゃいますかぁ?」

鼻世界の民の一揆に耐えきれなくなっていたぼくは、その救いの手に手を手向け

今この世界で起こっている数多の哀しみ憎しみを堰を切ったように話した。

「ではこのお薬が一番効果が期待できますねぇ」

長身の蛭子能収といった風貌のその神・薬剤師は、僕に漢方成分が入った錠剤を差し出した。

「あなたのような慢性鼻炎はですねぇ、点鼻薬のような一時的なものではすぐに治りませんのでぇ、
この錠剤を食後に10錠ずつ飲むとすぐに効果が期待されますねぇ〜、えぇえ〜へぇ〜、Hey!」

この神・薬剤師に、僕はいつのまにか慢性鼻炎だと診断されたようだ。

「あなたのような体質はですねぇ、ぶつぶつ…」

この神・薬剤師が特許を天にかざし、僕に説教を始めた目を盗み

この錠剤の値段を観てみると、4千円もするではないか!

まず、僕は慢性鼻炎ではない。

一時的にD-29の大空襲を受けて、早期な心の鎮魂と、鼻世界の復興を目標としているだけで

飽くまで慢性鼻炎ではないのだ!

神の光を発していたように見えた神・薬剤師も、よく見るとただの長身の蛭子能収ではないか。

騙された!ドラッグストアでさえ復興支援も名ばかりで、金の餌食ではないか!

嗚呼、人情の温度で満たされた川端商店街だとはとても思えない。

ここは一つ「喝」をお見舞いすべきである。

しかし、なおも説教を続ける長身の蛭子能収。



説教が終わると、僕は「なるほど、とてもわかりやすかったですわ。僕の物に対する愛情の注ぎ方や
日常生活が全くなってないということですね。ここはひとつ反省し直し、この薬を買いたいと思います」

懺悔はまだまだ終わらぬぞ的な顔を浮かべる長身の蛭子能収に、

僕はパブロンの点鼻薬を差し出し、1,500円を払い、レシートも受け取らず

点鼻薬を手に取り、木枯らし舞い上がる川端の街へとくりだした。

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